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「STAND」インタビュー記事 穂積奈々さん

インタビュー第五回は、いすみ×えんげきプロジェクトの主催者であり、『STAND』では俳優として舞台に立った穂積奈々さん。奈々さんがどんな思いで演じ、公演後にどんな変化があったのか、オンデマンドえんげきに込めた思いまで、詳しく伺いました。



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穂積奈々

いすみ市在住。

2017年よりいすみ市地域おこし協力隊。

いすみ×えんげきプロジェクト主催。

2018年えんげきワークショップをスタートし、2019年2月に『STAND』公演、

同5月にはオンデマンドえんげきVOL.1『いつもひとりで』公演(主演・柿本マミエ)を開催した。

https://www.isumi-x-engeki.com

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徹底的に取り組んだ冒頭のシーン


『STAND』の冒頭のシーンとは。

主催者として奈々さんが観客に向かってはじめの挨拶をする。

挨拶を終え、これからいよいよえんげきが始まる、というところで、観客の一人(役者・須崎かおりさん)が手を挙げ「えんげきってなんですか?」と質問をする。その質問に奈々さんが戸惑いながら答えていく。

役者、観客を巻き込んで奈々さんが場を回すことで進行し、観客はどこからがお芝居でどこからがリアルなのかの境界線も曖昧なまま『STAND』の世界に引き込まれていった。


ーお稽古は大変でしたか?

そうですねえ。セリフは決まっているけど、自分が今思いついたように言わなくちゃいけない。私のセリフの発し方で、他の役者さんの見え方も変わってしまう。繊細なお芝居が求められました。



ー最初の場面はかなり自然でどこからがお芝居なのか、全然わかりませんでした。

よかった!あそこはみんなと話すことを心から豊かで面白いと思っていないと退屈で意味がなくなってしまうシーンだったんです。公開練習をした時は、うまくいかず、すごくつまらないシーンになってしまって。演出の方から「みんながここを重要なシーンだと思ってないから聞いてくれない、つまらないシーンになるんだよ。」と言われて。私が本気で楽しませたい、伝えたいと思ってないとダメなんだってことわかって、みんなをワクワク楽しませる、それだけを徹底してやりました。超練習したんです笑。


STAND練習風景。



ー奈々さんは一番最後のシーンも担っていましたね。

はい。最後のセリフも同じようにすごく難しくて。みんなが物語の世界から帰ってきた時に、ただセリフが読まれてたら説得力がないものになってしまう。


「だからこの場をお借りして、少しだけえんげきをさせていただきたいと思います。私たちで。」


これが最後のセリフだったのですが、本当に心から思っていないと言えなくて。「この地球という場所で、他の誰でもない私たちで」という思いを込めました。大地に根をはって、そのエネルギーをみんなに届ける気持ちで。だから、ただセリフを読むのとはわけが違いました。


ー最後のあの奈々さんのあり方、セリフの伝え方があったから、美しい余韻が心に残ったんだなって、今のお話を聞いて改めて感動してます。

嬉しい!

全然自信がなかったけど、終わって2ヶ月経ってそう言ってもらえて本当に嬉しいです。




メンバーの協力を得て、自分が担うべき役割が明確に


―『STAND』公演では俳優であると同時に主催者としての役割も担わなくてはいけない、かなり大変だったと以前おしゃってましたね。

はい。一般的には俳優や監督演出以外の部分は、制作、広報、プロデューサーといろんな役割の人がチームで動いて、しかも先輩が後輩に教えながらやっていくそうなのですが、私は全くそれを知らなくて、最初全部ひとりでやろうとしていたんです。やってみて途中で「これ、やばくない?」ってなって笑。体調も崩すくらい、いっぱいいっぱいになりました。


―どうやってそこをクリアしていったんですか?

自分が倒れたらプロジェクトが進まなくなってしまう、これじゃダメだと思って状況をメンバーに話しました。誰かに頼るというのが私にとっては勇気だったけどみんな快く引き受けてくれて、役割分担ができるようになりました。それからはだいぶ楽になって。自分の役割はこのプロジェクトをホールドすることなんだって、強く思うようになりました。


本番は座布団が円上に並べられた。俳優が座る場所には野菜が置かれており、俳優一人ずつ観客の方々に交じって座っていったところからお芝居がスタート。



ーそして臨んだ本番、お稽古との一番の違いはどこでしたか?

やっぱりお客さんの存在ですね。40人のお客さんがつくってくれる空気があって、ドキッとしたり、焦ったり、こちらのつくりたい空気に反応してくれる体がたくさんあって、だいぶ助けられました。


ー本番では思い通りにできましたか?

満足することはできました。でももっとやれたなって今になって思います。私は演じながら自分を客観的に見るところがあって、そんな自分すらも超えられたらよかったなって、まだまだ止めてる部分があったなって思います。セイタカアワダチソウとか、もっとなれた気がするもの笑。


えんげき中に、セイタカアワダチソウになるシーンがある。

ー『STAND』公演を終えて、ご自身でここが変わったな、と思うことはありましたか?

それはもうたくさんあります。先日、オンデマンドえんげきのプロローグとなるエピソードをえんげきでやったんですけど、見ていた夫に「奈々が変わった、びっくりした。」って言われたんです。夫はえんげきワークショップの最初の頃に参加していたので、その頃の私と比べて変化に驚いたようでした。人前で演じることや自分を出すことに抵抗なく楽しんでる自分にも気づきました。『STAND』で短期間にぐっとお稽古したことで成長できたんだなと実感しましたね。



みんなの凸凹を受け入れられる存在でありたい。


―演じること以外での変化はありましたか?

『STAND』を終えた時に私が一番嬉しかったのは、本番を終えて俳優のみんながお客さんの前で感想を発表した時なんです。「人生が変わりました」って涙しながら言っているのを聞けて本当に嬉しかった。みんなの凸凹を’えんげき’を通して垣間見ることができて、その凸凹を表現できる場がここにあるということに感動して。自分が感動するだけではなくて、誰かが感動で涙していたら私はすごく幸せなんだってわかって、自分自身のマインドが変わった瞬間でしたね。その気持ちがその後のカフェトークやオンデマンドえんげきにつながっていったと思います。


STAND後に行われたカフェトークの様子。


―自分が演じる立場から徹底的に誰かをサポートする役へ。役割が変わっていったんですね。

そうですね。もちろん葛藤もあります。「私もやりたい!」というのは常に出てきますし笑。でも同時に「凸凹の世界をつくる」ということに私は使命を感じているんです。

『STAND』であれだけ大きな機会を与えてもらった私だから、今度はそういう機会を与える側になりたい。みんなの凸凹を受け入れられる存在。そのことに挑戦したいと思っています。


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書き手 くまさかゆかり

千葉県出身。東京在住。 会社員、時々ライター。

2017年に初めて訪れて以来いすみのファン。自然の美しさや自分らしい生き方を実践する人たちとの出会いに刺激を受ける。2019年2月の『STAND』公演を鑑賞し、感想文を送ったことがきっかけで役者の方へインタビューをすることに。「その人の真ん中にあるもの」をくみとれる書き手になるべく修行中。

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(写真:柿本マミエ)