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「STAND」インタビュー記事 太田加世さん

最終更新: 2019年7月11日

いすみ×えんげき「STAND」インタビュー第一回は、太田加世さんです。

主催者の穂積奈々さんが、最初にいすみ×えんげきプロジェクトのことを相談したのが加世さん。ご自宅の光風林(Kou Fu Rin)がワークショップの会場になったこともあり、「STAND」のメンバー募集があった時も、ごく自然な流れで参加を決めたそうです。もともと演技経験がなかった加世さんにとって、『えんげき』とは一体どんな体験だったのか、お話を伺いました。


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太田加世

いすみ市在住。

建築家、ヨガ呼吸法講師(The Art of Living 講師)

6人の演者の中のお一人。

2018年10月からいすみ×えんげきワークショップに参加。

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ーまず最初にいすみ×えんげきワークショップに参加されたきっかけをお聞かせください。

加世:

子供この頃から人前に出るというよりは裏方に回る方でした。目立つのは嫌いな方で。でも奈々ちゃんからこんなことをやりたいと相談された時に、よくわからないけど面白そう、受けてみたいと思いました。私は普段から自分を隠しているわけではないけれど、それでもさらけ出せてない部分がまだあるな、と思っていて。舞台に立つのは大変そうだけど、案外鎧を捨てたら軽くて楽なことじゃないか、という予感もあったんです。


ー「STAND」公演が決まった時にもすぐに手を挙げられたのでしょうか?

加世:

そうですね。奈々ちゃんの目が「やるでしょ」みたいな感じだったので(笑)

舞台なんてやったことなかったけど、偶然のような必然のような仲間と、演出家の司田さん、麻生さん、劇作家の阿藤さんとの出会いが何より大きかったですね。


ー実際やってみていかがでしたか?

加世:

司田さんからは、「演技禁止」と言われていました。まるっきり自然体でやっていたので逆にこれでいいのかなと思うくらい。私は身振り手振りがもともと大きい方なので、「もしかして普段の私の方が演技しているのでは?」と逆になってしまって、変に意識をして表情や表現力が乏しくなってしまったことも。かっこつけてしまった(笑)。普段私たちは「役割」をしているというのがあると思うんです。私なら地域の人間であり、建築家であり、ヨガの先生。でも司田さんは「役割」を超えたところで私を見てくれました。


(写真提供:いすみ×えんげき)


そして仲間もすごかった。先入観が全くなくて、私をただの「加世」として見てくれたんです。それが本当によかった。“愛してる感” がこっちからもほとばしって全員のことが好きになりました。稽古中は、お互いのいいところも悪いところもきちんと意見を言い合っていきました。それがとても良かった。信頼感がありました。だからメンバーのことを愛してる感じになっちゃいます。もともと好きだったけど、さらに深く。みんなとても優しかった。


ー自主練もたくさんやったと伺いました。

加世:

そうですね。かなりの時間を共に過ごしました。

「STAND」はお芝居の一つ一つの動作、言葉に意味があって、先のストーリーを示唆することがちりばめられている。司田さんは言わないけど、自分たちで読み込んで理解していきました。

稽古中になんとなくスルーしてやってきたシーンがあったのですが、本番当日の朝、「やっぱりわからない」となって。そのままやることもできたんだけど、相手役の方に打ち明けたら、「確かに私もモヤッとしてる」となって。何のためにここで歩いて、何のためにこのセリフがあるのかを一つ一つを確認して直しました。うやむやにせずやってよかったと思います。



(写真提供:いすみ×えんげき)



体をつくると心もついてくる


ー事前に書いていただいたアンケートに、「伝えるにはどう『ある』のか、ということが大事だと知りました。」と書かれていましたが、あり方、という部分を詳しく教えていただけますか?

加世:

体からつくるというワークショップをやりました。「水位」と「パワー」を使って体をつくるんです。例えば、殺人をした人を演じるとしますよね。人を殺した後の「水位」はどうか。高い、だけど高すぎないよね、パワーの方は抑え目だな、とか。もしこの人が愉快犯だったら「水位」は高め、後悔してたらローだよね、とか。そうやって場面に合わせて体からつくると自分の心は痛くならずに済む。そういうことを教わりました。


ー「水位」で体をつくる、というのは初めて聞きました。

加世:

希望のある人の体と希望のない人の体。まず自分の体を希望のある形にすると心に希望が湧いてくる。そういう順番です。体はすごい。体をどういう風につくるかで何でもできるんです。劇ってパワーがあるから、何か思いを伝えるにはとてもいいなと思いました。

劇中に私が好きな食べ物を「肉!」と答える場面があるんですが、実際私はベジタリアン。あのシーンは肉を好きな人の体にして臨みました。


ー本当にお肉がお好きなのかと思って見てました!

加世:

最初の頃は、お肉が好きな体になってなかったのでうまくいかなかったけど、だんだん自然に言えるようになって。でも本番当日の朝、家族と大喧嘩したからか1回目の公演でセリフがちょっと上ずったんです。司田さんやマミエさん(共演者の柿本マミエさん)にはバレてましたけど(笑)でも「水位」のことを思い出して持ち直しました。


ーその他本番で特に印象に残ったことはありますか?

加世:

観客が入ることでこんなに場の空気が変わるのか、と思いました。一人一人の存在の大きさといいますか。どんな些細なことでもその人がそこにいる影響力は大きい、しかも自分たちはそこで立ってやっているんだから、相当(場の空気に)影響力を持ってやっているんだなということを自覚しました。


肉体を使ってありのままに表現する楽しさ


ー本番終えて、今どんなことが残っていますか?

加世:

肉体で表現することの楽しさですね。持って生まれたこの肉体を通して表現することで、やっと自分のことも好きになれるんだなと思いました。誰か他の人と比べるということはだいぶなくなってきていたけど、私の中にはまだ残っていたんです。『えんげき』を通してそれがなくなりました。ありのままでいいと本当にわかった。観てる人に「あの人たち、あんな普通にやっててそれでいいんだ」って思ってもらえたら嬉しいし、私自身も救われます。


(写真提供:いすみ×えんげき)


加世:

経験がないメンバーだったからこそできたこともあったと思います。

初めてだからできること、経験を積むからできること、それぞれあるので1回1回を楽しんでいきたいですね。ワークショップや練習もお稽古という本番。インタビューを受けている今も人生の中では本番。どの瞬間も楽しんでいく、そして適当にしない、ということが大事だと思います。


私たち自身が愛


加世:

セリフが入りすぎて何にでも当てはめてしまう、それくらい司田さんの脚本に知恵や気づきが多かったんです。終わった後メンバーみんなで片付けをしていて、物を担ぎながら歩いている時に『えんげき』が始まって。「わたしとあなたの”あいだ”に私たちがいる。“あいだ”ってことは愛じゃないの?ってことは私たち愛でつながってるし、私たち自身が愛!?」ってなって、みんなで「すごーい!」って言い合って泣きそうになりました。


今誰かに何かを伝えるとしたら?そうですね、世界中の人に「愛してます!」と伝えたいです!


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書き手 くまさかゆかり

千葉県出身。東京在住。 会社員、時々ライター。

2017年に初めて訪れて以来いすみのファン。自然の美しさや自分らしい生き方を実践する人たちとの出会いに刺激を受ける。2019年2月の『STAND』公演を鑑賞し、感想文を送ったことがきっかけで役者の方へインタビューをすることに。「その人の真ん中にあるもの」をくみとれる書き手になるべく修行中。

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(写真:柿本マミエ)