「STAND」インタビュー記事 山東大記さん

最終更新: 2019年7月11日

インタビュー第三回は、山東大記さん。穂積奈々さんに誘われ参加したワークショップで初めてえんげきと出会い、そこから公演まで全てが楽しい時間だったといいます。『STAND』が大記さんにとってどんな経験だったのか、出演者の穂積奈々さんと柿本マミエさんも交えて詳しくお話を伺いました。


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山東大記(さんとうだいき)

いすみ市大原の伊勢海老漁師の家に生まれる。

画家。

2018年のチェコ共和国への留学から生まれた作品展

『日本に来たチェコ人 チェコに行った日本人 二人展』

チェコ大使館チェコセンターにて開催。

2018年11月よりえんげきワークショップに参加。

『STAND』では唯一の男性俳優。

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ーSTANDの公演を終えて今の率直なお気持ちをお聞かせください。

大記:

とにかくみんなに会いたいですね。ラブです。


ーえんげきワークショップに参加されたきっかけを教えてください。

大記:

もともと演劇には興味がありました。ステージという箱の美術面にも興味が強くて。でも接する機会がなくて、そんなときに穂積(主催の穂積奈々さん)にワークショップに誘われて、参加しました。


穂積奈々(以下奈々):

ワークショップが始まった時からずっと誘おうと思っていたのですが、日程が合わなくて参加してもらえなかったんです。ワークショップの終盤、11月の2日連続開催の時に誘ったら「行く行く!」って言ってくれて。その時の参加者は大記さんだけでした。


ー参加者1人で演出が2人それは豪華ですね!参加してみてどうでしたか?

大記:

やってみてすぐに、ここなら思いきり自分が出せるかもしれない、と感じました。ワークショップの序盤で泣いちゃったりしたものね笑。

奈々:

そうそう。ワークショップで私が話した話を大記さんが真似をする、というのをやったんですけど、悲しい話をした時にその場にいたみんな泣いちゃって。


大記:

普段から自分を出しているつもりなんですけど、芯の部分まではなかなか出せないじゃないですか。でもここなら出せるぞ、いけるぞ、と思いました。その時はまだえんげきが何かまでは理解してなかったけど、自分が出せるとわかって、『STAND』公演が決まった時は、ごく自然な流れで参加を決めました。



ー脚本をもらった時は最初はどう思われましたか?

大記:

セリフを覚えられるかと最初は少し心配でしたが、練習したら自然と身に染みていきました。「覚える」というより「身に染みる」という感覚が近いかな。


ー脚本・演出の司田さんからは、「演技禁止」と言われていたと伺いました。それは大記さんにとってはどうでしたか?

大記:

やりやすかったです。普段の自分でいられるんだって。

逆に牛のシーンが一番恥ずかしかったし、プレッシャーでした。あれは完全に演技だから。



(写真提供:いすみ×えんげきプロジェクト)

牛のシーン:主人公のいずみちゃんが大記さん演じる牛に好きな食べ物を問う場面。牛の答えは「草。」



柿本マミエ(以下マミエ):

あれは完璧な牛だったよね!笑 


大記:

ワークショップの中で、僕が牛小屋の匂いが好き、って言ったことが脚本にも活かされてて。最初は迷ったんです、二足歩行にしようかとか。


―どんな風に演じるか、それも委ねられんてたんですね!

大記:

そうです。司田さんからは「牛」というお題だけが投げられていて。それをどう演じようか、僕たちがやるのを見て楽しんでるみたいでした笑。実際演じることになって牛小屋にも行ったんです。


ー牛を見に、ですか?

大記:

牛そのものというより、牛がいることの空気感を見に、ですね。空気感をお客さんにも伝えなきゃと思って。


奈々:

牛のいる空気感ってなかなか伝えられないと思うのですが、本当に完璧で。1回もダメ出しされなかったよね。


大記:

大好きだからね、牛笑。


ー本番をやってみて、稽古との違いはどうでしたか?

大記:

僕は最初からお客さんがいた方が絶対楽しいと思っていたので、早くお客さんの前でやりたいと思っていました。お客さんのエネルギーも入ってくるから、自分たちだけではないすごいパワーになるなと思って。一人でやったらお客さんに負けちゃうけど、みんながいるから心強かったです。ゲネプロ、本番2回、それぞれ雰囲気が違ってやっていて楽しかったです。



(写真提供:いすみ×えんげきプロジェクト)


ー大記さんが描いた役者の方6人の絵も素晴らしかったです。あの絵を描こうと思ったのはどういう理由からですか?

大記:

演技をやるのに「水位」というの教わったので、それを使って描いてみようと思いました。

(※水位とは、上半身を水槽にみたて、感情の上がり下がりをその水位として感覚を掴む演出家司田さん・演出助手麻生さんのメゾット)


大記:似せようとして描くのではなく、メンバーが普段どんな「水位」なのかを感じて、そしたら手が勝手に動いて描けたという感じ。マミエさんを描いたら娘さんの姿も見えてきたりして、絵にその人の背景も入ってくるのは不思議でしたね。



(写真提供:柿本マミエ)


ー公演が終わってから、大記さんの中で何か変化がありましたか?

大記:

変化、よくわからないけど… あ、でも自分で思った通りに世界はつくれるんだってことが確信に変わりました。「感覚を開く」ということは前から体ではわかっていたけど、頭でも理解できるようになって、コントロールできるようになりました。


大記:

稽古の中でみんなでたくさん話し合いをして、すればするほど意識が高まって良い方向に向かっていると実感できた瞬間は、喜びそのものでした。感覚を開く、というのは喜んでいるのと同じ。ふわふわしているけど、地に足がついているというか。公演後の打ち上げでも、みんなの感覚が開いていてすごかったんです。


マミエ:

その日が誕生日だった麻生さん(演出助手の麻生素子さん)のお祝いにケーキをみんなでエアー(つくり真似)でつくったのですが、事前に打ち合わせを一切していないのに、まるでテレパシーを使ったかのように絶妙なタイミングで即興が始まって。


奈々:

つくり方も役割分担も全部その場の空気をつかんで一人一人やっていって、おままごとの延長みたいな感じで。麻生さんは感動して泣いてくれて、笑いもたくさん起きてすごく楽しかったです。


大記:

あれは本当にすごかった。感覚が開いていれば、なんでもつくり出せるなと改めて思いました。それにみんなそれぞれ直感でやっているから悪い方にはいかない。直感って抑えられることが多いと思うんです。社会に出てそれじゃまずいよ、みたいに。でもここではなんでもあり。こんな素晴らしい感覚を身につけて大人になったら、きっと面白くなると思うから、今後思春期の子たちとも’いすみ×えんげき’をやれたらいいなと思います。


大記:

『STAND』は自分にとって人生を左右する経験でした。これをやってなかったらやっていない人生、だけどやったからさらに面白い人生になったな、と。

感覚を開きさえすれば、同じように開いた人たちと勝手につながっていく。喜びでみんな繋がっていこう!と言いたいです。



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書き手 くまさかゆかり

千葉県出身。東京在住。 会社員、時々ライター。

2017年に初めて訪れて以来いすみのファン。自然の美しさや自分らしい生き方を実践する人たちとの出会いに刺激を受ける。2019年2月の『STAND』公演を鑑賞し、感想文を送ったことがきっかけで役者の方へインタビューをすることに。「その人の真ん中にあるもの」をくみとれる書き手になるべく修行中。

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(写真:穂積奈々)




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